2022/10/06 update

代表長手×営業戦略専門家山野氏対談 日本のMR活動と今後

新型コロナウイルス感染症の流行によって医療機関の訪問者規制が行われ、MRの営業活動にも顕著な影響を与えている。直接対面による営業活動が制限される中、リモートによる面談やその他通信機器を使用した活動に営業の形式も変化を余儀なくされる。MRによる医薬品の情報提供は新型コロナウイルス感染症流行前より困難になっている中、今後、医療業界の中でMRの営業活動はどのように変化していくのか。また、今後求められるMRとはどのようなMRなのか。

e-Projection代表取締役社長の長手と顧問であり、医薬品営業・マーケティングの専門家でもある山野高氏が対談を行った。

 

―海外から見た日本のMR活動-
長手
そもそもグローバルの視点からみると、日本のMRの活動というのはやはり特殊なのでしょうか。よく驚かれるのが流通への販管費で、グローバルから見ると特殊と言われます。“薬を運ぶのになぜこんなにコストがかかるのか?”と。

山野
聞いた話では、例えば病院では、アメリカのMRは個人が各医療機関、各医師に訪問して営業活動をするということはしないそうです。月に1回病院に行って、展示室のような場所で医薬品に関する情報を展示して、そこに複数の医師が来る。そして来た医師はその期間気になっていた質問をMRに問うので、MRはその質問に答えるんだそうです。歴史的に日本のMRに見られた医師とMRの人間的なつながりではなく、専門的な質問に答えるエキスパート、という位置づけ。なので、もちろんMRの社会的な地位は高いと言えるし、また。メーカーに属するというより、地域ごとに担当のMRが配属されて、各社の薬剤に関して質問を受けるという話も聞きます。

長手
なるほど。それぞれの医療機関や医師に複数のMRが訪問するという形式ではないのですね。
今、国内のMRは5万人ちょっとと言われています。この数は今後どうなっていくと考えますか?

―国内のMRの状況と今後-

山野
2025年には4万人まで減るとも言われていますね。私としては、今のMRの業務内容が変わらないのであれば3万人まで減る※のではないかと思っています。
※2015年の矢野研究所の予測では、国内のMRは2025年には2万2000人まで減少すると予測している

長手
それはなぜですか?

山野
例えば、訪問による営業活動が制限されたと言われていて、それは事実だと思うのですが、実際の医薬品の売上全体は落ちていない。営業にかかるコストは減っているはずなのに、売り上げは減っていないんです。

長手
であれば、製薬企業側はMRが今後減少していくと利益が増えると言えるのでしょうか?

山野
そうだと思います。もっといえば、営業活動の形態が変化することでもコストが削減されています。例えば、営業活動を行ったことで生じる日当や出張費も払わなくていい。MR自体の人数も減っているけど、活動自体も削減されているからその経費もかからない。

長手
ではコロナ禍のMRの一日はどう過ごされているのでしょうか?

山野
最近では1日に多くて3~5件のアポイントメント程度、と聞きますね。コロナ対策もありますが、社会全体の働き方改革の影響で18時以降にアポイントメントが入ることはほとんどないと聞いているので、お昼と夕方、それぞれ2人の医師に会う程度。

長手
そうなんですね。世の中の潮流にコロナの流行が追い風になってMRが減っているといえますね。

山野
コロナがトリガーになっているとは考えられると思います。また、製薬企業側、経営者としてもこのような状況だから、MRを中心に人員を整理しやすい風潮があると思います。

長手
では、コロナが終わったらその風潮に歯止めがかかる、または戻ってくるということはあるのでしょうか?

山野
元には戻らないと思います。一回厳しくした規制を元に戻して緩めることはないのではないでしょうか。特に、MRを受け入れていた医療機関側がこのコロナ禍や社会全体の働き方改革の中で少しずつMRの営業活動が減っていったことに慣れていって、そこまで困っていないのだとすると、もう一度訪問を受け入れる文化には戻らないと思います。診療科によって、あるいは開業医の先生方は一定数MRの訪問を希望されていると聞いていますが、一方で訪問者や訪問時間については制限を設けるようになっているとも聞きます。

長手
困り感がそこまでないので今は必要とされていない。一方で、多忙な医師が医薬品に関してコンパクトに欲しい情報だけ提供してくれるMRは貴重でなくならないのではないでしょうか?

山野
私もそう思います。専門性がより求められていく職業になっていくのでしょう。逆に言うと知識がより専門的なものまでカバーしていないと、勤まらなくなっていくともいえます。一方で、専門性がより高められていくと、MRの専門性が医師に近づいていって、さらに自社の製品に特化してしまうということは考えられます。幅広く、同じ領域の、他の会社の情報も含めて知っているMRが医師にとっては貴重だと聞きますが、そこが損なわれていくような気もしています。

長手
広く、その領域で深く、ということですね。

山野
そうなってくると、本社がバックアップする必要がある部分も大きくなっていきますね。色々なチーム、マーケティングも研究も色々なチームの知識が集まったポジションがMRで、実際そのようなMRが求められている。医療従事者を含めて、本社のチームも含めて、一緒になって医薬品を考えていく専門家になっていくのではと思っていますし、それだと人数は減っていくのではと思いますね。

―新規モダリティの薬剤の参入によるMRの変化-
長手
少し話は変わりますが、複雑な製品や疾患、たとえば再生医療等製品といった医薬品が市場に参入してきていますが、それによってMRは変わっていくことは考えられますか?

山野
そうでしょうね。

長手
求められる資質、例えばバックグラウンドの知識が必要になってくることも考えられますか?

山野
それもそうでしょうし、日本国内で最近では薬学部が増えて、薬学のバックグラウンドを持った学生も飽和してきています。薬剤師にならない学生がMRという話はよく聞くし、先ほどお話しした求められる専門性という観点でもそのような知識は必要になってくるといえるでしょうね。時代が変わって、会ってくださる医師、受け入れてくださる医療機関は少なくなっている中でそれを左右するのは必要な情報をMRがちゃんと提供できるかでしょう。

―新しいMR働き方―

長手
お話しを聞いているとMRのシェアリングみたいなことも今後起きてくるような気がしてきました。地域は限定したうえで、その領域の医薬品すべてに精通したMRが複数の会社の製品を売る、というようなことはどうでしょう?

山野
最近ではコントラクトMR業が盛んとも聞きます。製薬会社としても、コスト面で魅力的で、製品を発売するときは多くのMRが必要だけど、3年くらいして落ち着いたら少ない数でいいので契約しない、というような。
一方で専門性を高めたコントラクトMRは存在して、最近ではコントラクトのMRの質が上がっているとも聞いています。

長手
情報提供活動ガイドラインの問題はあるでしょうが、医師にとってはニーズがあるということでしょうか?

山野
そうですね。ある製薬会社の製品を特別力をかけて営業するのではなく、中立的な立場から複数の製品について紹介できれば、医師は包括的に治療選択肢についての情報を得られるから、それができるMRは重要視されるでしょうね。